大田区の外国人滞在施設経営事業特定認定手続き代行、簡易宿所申請手続き代行

簡易宿所の規制緩和と東京23区の対応

民泊推進の流れの中で、平成28年4月1日に旅館業法に定められた簡易宿所に関する基準が一部緩和されました。

これにより簡易宿所の許可が取りやすくなるのは間違いありませんが、一部で報道されているような「民泊解禁」とまで言えるかには疑問が残ります。

また、詳しくは以下の記事で説明しますが、今回の改正によって既に変わった部分と、各自治体の対応が無ければ変わらない部分があります。

そこで平成28年4月下旬時点で東京23区の各保健所がどのような対応をした、もしくはする予定なのかを聞いてみました。

記事の最後に玄関帳場の設置義務についてまとめた表を掲載していますので、一覧で見たいという方はそちらをご覧ください。

改正内容

今回の改正の具体的な内容ですが、緩和されたのは主に面積基準と玄関帳場に関する部分です。

まずは、面積基準について。

床面積の基準

<旅館業法施行令第1条3項一号>

改正前

客室の延床面積は、33平方メートル以上であること。

改正後

客室の延床面積は33平方メートル(旅館業の許可の申請に当たって宿泊者の数を十人未満とする場合には、3.3平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。

※上記条文は読みやすいよう一部編集しています。

これまでは無条件に「33平方メートル以上」としていた旅館業法施行令を改正して、「(~宿泊者の数を10人未満とする場合には、3.3平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)」という部分が加わりました。

これにより、それまでは簡易宿所の最低面積は33㎡が必要だったところ、宿泊者が9人であれば29.7㎡、8人であれば26.4㎡必要というように変わりました。ただし、簡易宿所は「多数人で共用」するものであり、「多数人」とは2人以上とされているため、簡易宿所の最低面積は6.6㎡ということになります。

玄関帳場

次に玄関帳場について。旅館業法では、ホテルのフロントのような設備のことを玄関帳場といいます。

そもそも玄関帳場の設置については旅館業法上規定がなく、厚生労働省は各自治体に対する通知により玄関帳場の設置を要求し、各自治体の条例に委ねるという形を取ってきました。

しかし、玄関帳場の設置についての緩和を求める通知が各自治体に出されました。

その通知の内容がこれです。

玄関帳場等の設置について、宿泊者の数を10人未満として申請がなされた施設であって、要領のⅡの第2の3(1)及び(2)に掲げる要件を満たしているときは、玄関帳場等の設備を設けることは要しないこととするところ、改正の趣旨を踏まえ、簡易宿所営業における玄関帳場等の設置について条例で規定している都道府県等においては、実態に応じた弾力的な運用や条例の改正等の必要な対応につき、特段の御配慮をお願いする。

そして、この通知にある「要領」とは「旅館業における衛生等管理要領」を指すのですが、その要領の改正箇所の内容は以下のとおりです。

<旅館業における衛生等管理要領Ⅱの第2の3>

改正前

適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けること。

その他「第1 ホテル営業及び旅館営業の施設設備の基準」の11(玄関帳場又はフロント)に準じて設けること。

改正後

適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けることが望ましいこと。その他「第1 ホテル営業及び旅館営業の施設設備の基準」の その他「第1 ホテル営業及び旅館営業の施設設備の基準」の11(玄関帳場又はフロント)に準じて設けることが望ましいこと。ただし、宿泊者の数を10人未満として申請がなされた施設であって、次の各号のいずれにも該当するときは、これらの設備を設けることは要しないこと。

(1) 玄関帳場等に代替する機能を有する設備を設けることその他善良の風俗の保持を図るための措置が講じられていること。

(2) 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。

というように改正されました。

これは玄関帳場が一律で不要になったというわけではなく、国が各自治体に対し「このように運用してください」と協力を要請するということです。

なので、玄関帳場の設置が必要かどうかはこれまで通り、あくまで各自治体に委ねるという点には変わりがなく、今回の規制緩和=玄関帳場の設置義務が無くなる、というわけではありません。

東京23区の対応

そこで、これらの改正を受けて東京23区が国の規制緩和という方向性に対しどのようなスタンスを取っているのか、また規制緩和に伴い条例等の改正が有るのか否かについて、23区の保健所生活衛生課に聞いてみました。

今後簡易宿所の許可取得を検討している方には参考になると思います。

以下50音順に紹介します。

足立区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

規制緩和という国の方針には合わせる。

ただ、合わせるのはあくまで面積基準についてであり、トイレ等その他の要件について条例や規則の改正はない。また、今後の改正についても検討していない。

荒川区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

規制緩和という国の方針には合わせる。

ただ、合わせるのはあくまで面積基準についてであり、トイレ等その他の要件について条例や規則の改正はない。また、今後の改正についても検討していない。

板橋区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

規制緩和という国の方針を推し進める。

施行令の改正を受けてから検討を開始したので、現在条例等の改正はなされていないが、夏前を目処に改正を検討している。

具体的には、まず玄関帳場に関して、現在その設置については指導という形で行っているが、玄関帳場もしくは類似の設備の設置義務を条例に盛り込む予定。

また、トイレの数については、現在は個室にトイレが無い場合に限り、共同便所の設置数の規定が適用される形になっているが、改正後にはその場合でも個室の定員に合わせて、個室内において設置数の規定が適用される形に改正される見込み。

人数に対する設置数自体に変わりはない予定なので、規制緩和というわけではない。ただ、例外を緩やかに考えていく可能性はある。

江戸川区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

面積基準以外は現行通りで、条例等の改正はしていない。

国の方針に関しては基本的に従うが、国の方針が江戸川区という地域になじまないということもあり得るので、今後の方針次第ということになる。

仮に方針に従う場合、夏から秋にかけて条例の改正という形を取るか、指導の方法を変えるという形を取るかはわからないが、なんらかの手段を講じるつもり。

現在検討はなされていないものの、検討していかなければならないということは認識しているので、夏前にも何らかの改正がなされる可能性はある。

大田区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務あり

現状では条例等の改正はないので、面積以外の要件については、従来通りの基準に従って判断する。ただ、国の答申を待ってそれに合わせた改正等は予定しているが、いまだ具体的な検討はしていない。

葛飾区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

面積基準以外は現行通りで、現在条例等の改正もなく、その予定もない。検討もしていない。

ただ、今後どうなるかはわからない。目まぐるしく状況が変化しているので、現在は様子見というのが本音であり、率先して変えて行こうというスタンスではない。

北区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

条例の改正はしておらず、今後改正の予定はない。ただ、要領という細かい内部基準の改正は既にしている。

内部基準であるため改正の公表はされていないが、規制緩和に合わせて運用が多少変わったといえる。

江東区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

規制緩和に合わせた条例の改正はないが、今後改正の可能性はある。3月31日に旅館業の営業許可に関する指導要綱が定められた。

ただ、これは設備基準等の具体的な要件を規定したものではなく、営業許可を受けようとする者の責務等を定めた、抽象的なものにとどまる。なので、基本的には面積基準以外は従来通り。

品川区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

要綱の改正はあったものの、条例の改正はなく、基本的に面積基準以外は従来通り。

国の方針に合わせて今後条例の改正の可能性はあるが、国の方針自体がいまだ確固たるものとなっていない以上、改正の有無、改正の内容は未定。

渋谷区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務あり

条例の改正はなく、あくまで面積基準以外は従来通り。現在検討もしておらず、改正の予定もない。

新宿区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

条例や規則の改正はない。今後改正する予定もない。したがって、面積以外の部分については現状の基準に従い審査する方針。

杉並区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務あり

条例や規則の改正はしていない。現在検討もしていない。面積以外の基準については従来通り。

墨田区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

旅館業法施行令の改正以外で変更点はない。

現在条例や規則の改正は検討していない。今後もその予定はないが、あくまで可能性の問題であり、どうなるかはわからない。

世田谷区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務あり

条例等の改正はない。現在検討もしていない。

今後については国の方向性が明確になってから、状況を確認しつつ、検討していく。

台東区

現状:これまでは条例上、玄関帳場の設置義務はなかった

条例を改正し、営業時間中の営業従事者の常駐義務と、玄関帳場の必置義務を条例に規定した。

ただ、これらの規定はそもそも指導により運用されていたものを、条例レベルに引き上げたに過ぎず、考えが変わったというわけではなく、規制緩和という国のスタンスに相反するものでもない。

あくまで事業として簡易宿所をするうえで当然に必要な管理体制を十分なものとするという趣旨である。

また、現在その他の部分の条例改正は検討していない。その予定もない。ただ、今後どうなるかはわからない。

千代田区

現状:平成28年1月に条例上、玄関帳場の設置義務を設けた

施行令の改正を受けての条例改正はない。

ただ、千代田区では1月1日に条例や規則の改正をしている。

まず、条例では施設内に従業員を常駐させることを要求している。これについては、基本的に例外はない。

他にも、玄関帳場の必置、フロント等客室のないフロアも含めた男女別のトイレの設置、客室に「直接」外気を供給できる設備の設置等を要求している。

また、規則では簡易宿所について部屋の最低面積を「4.8平方メートル」としている。この規定と施行令改正との関係が問題となるが、この規則は改正された施行令が該当しない場合、すなわち10人以上の場合に適用されるもので、規則と改正施行令は抵触するものではない。

中央区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務あり

施行令の改正を受けての条例規則の改正はない。また、現在検討もしていない。今後は国の動きを見定めつつ検討していく。

豊島区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務あり

条例や規則の改正はないので、面積基準以外で変化したところはない。

それは、そもそも条例で定められていた玄関帳場の必置についても同じである。現在改正を検討しておらず、今後その予定もない。

もっとも、今後、国の方向性が明確になった後に検討する可能性はある。

中野区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

条例規則の改正はなし。検討もしていない。ただ、半年先、一年先がどうなっているかはわからない。国の方向性次第では検討しなければならないという可能性もある。

練馬区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

現時点で条例規則等の改正はなし。

ただ、今後要綱の改正を予定している。これは、簡易宿所が注目され、それについての質問が多いにもかかわらず、要綱が公表できるものとは言えなかった。そこで、形式のみならず内容についても改正することを検討している。公表時期は不明。

条例や規則については、今後、国の方針がより明確になって、そこで改正するかどうかの検討に入るものと考えている。

文京区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務あり

条例や規則の改正はなし。検討もしていない。したがって、面積基準以外変わっていない。

以前から玄関帳場については必置だったので、その点についても同様。

港区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

条例規則の改正なし。検討はしているものの、具体的なレベルにはなっていない。したがって、面積基準以外は従来の基準のままで変化はない。

目黒区

現状:条例上、玄関帳場の設置義務なし

条例や規則の改正はない。

今のところそのような話もでていない。ただ、今後、国の方針が明確になってから検討し始めると考えられる。現在は様子見といえる。

まとめ

玄関帳場規制について 明文の設置義務 緩和の予定
足立区 無し 無し
荒川区 無し 無し
板橋区 無し 無し
江戸川区 無し 検討中
大田区 有り 今後検討予定
葛飾区 無し 無し
北区 無し 内部基準をやや変更
江東区 無し 可能性あり
品川区 無し 可能性あり
渋谷区 有り 無し
新宿区 無し 無し
杉並区 有り 無し
墨田区 無し 無し
世田谷区 有り 可能性あり
台東区 有り 無し
千代田区 有り 無し
中央区 有り 無し
豊島区 有り 無し
中野区 無し 無し
練馬区 無し 検討中
文京区 有り 無し
港区 無し 検討中
目黒区 無し 無し

面積基準を緩和した旅館業法施行令は条例に優先する政令なので各自治体で差異はありません。

他方で、玄関帳場の設置についてはあくまで各自治体の判断に委ねられているため、条例が既に制定されていたり、今回新たに制定されたりと、各自治体でそれぞれ違いがあります。

条例で玄関帳場の設置義務を規定していない自治体が、規制緩和の流れに際して特に動かないというのは、国の方向性に従った流れということができます。

23区の中でも、そのようなスタンスの自治体が過半数を占めていました。

逆にこれまで条例で玄関帳場の設置義務を規定していなかったにもかかわらず、今回新たに規定した、もしくは、現在検討しているという自治体もあります。

これは一見すると、国の方向性の真逆を進んでいるようにも思えます。

ただ、そのような自治体でも以前から指導レベルでは玄関帳場の設置を要求しており、方向性そのものが変わったわけではありません。むしろ、適正な簡易宿所の許可取得の促進という点では、国の方向性に合致するものと言えます。

このように各自治体は、それぞれの地域の事情に合わせて旅館業許可を運用し、衛生や安全といった様々な観点から適正な宿泊施設営業が行われるように対応しています。

これは許可を取る側から考えると、その地域に即した営業方法を取ることによって、保健所の裁量である程度柔軟な対応を受けられる可能性があるということでもあります。

許可を取るときには、事業者は規制を受ける側になるため、どうしても保健所と対立するような形になってしまいがちですが、しっかりと関係する行政機関と協議して、一緒に許可を取れるような形に持って行くというスタンスで許可取得を進めることも大切です。

行政書士法人シグマでは、そのような関係行政機関との調整などもしっかりと行いながら、簡易宿所の営業許可取得をサポートしますので、簡易宿所の許可取得をお考えの方はぜひ一度ご相談ください。

※本記事は平成28年4月時点の情報を基にしています。

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